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ヒドリガモ♀成鳥 18/11/01 堺市
大阪府下のカモの飛来もどうやらやや遅れ気味のようである。当地も池の中央に20前後の群れがあるだけで総数としてはかなり寂しい。
この個体は普通、この時期に見かける♀成鳥としては違和感がある。まず初列及び次列を一斉換羽中で、簡単に言えば翼が無い状態である。一瞬近寄ってきた際に負傷個体かと思ったが、そのような雰囲気はどこにもない。負傷個体(怪我を負い障害を残す形で治った個体)である場合、片翼のみがない、乱れている、またはその部分だけ換羽に異常がある・・・などまず個体として大きな違和感を覚える。しかしこの個体は両翼が無く、換羽の途上であることが確認できた。
羽衣としては生殖羽から非生殖羽に移行中とすべきか。多くのヒドリガモ♀に対して大凡半周以上遅れて換羽を開始している。肩羽にも摩耗の進んだ薄い橙色の羽縁をもつ羽毛と新しい羽毛が混在する。
実は現地で初列がないことに気付いたのはかなり時間が経ってからだった。観察不足と言ってしまえばそれまでなのだが、一番最初に目を惹かれたのは三列風切羽だった。周囲の淡色羽縁が目立ち、内弁外弁でコントラストのある♀成鳥の三列とは明らかに異なって見え、当初は深く考えずに幼鳥が近づいてきたと考えた。幼羽とするにはやけに成鳥チックな体羽に一瞬戸惑った。
さて、この三列は生殖羽なのだろうか?IMG_7938
同上
角度、写り具合の要素がかなり大きいものの見え辛いがわずかに橙色を帯びた羽縁が見える。ヒドリガモ♀生殖羽の三列は画像検索やカモ図鑑の画像を見ていただけばと思う。かなりパターンとしては単調なタイプの生殖斑であり、摩耗が少ないように感じる。この点が引っかかったのだが、かなり丸みを帯びる(この形状を見て幼羽かと思った)あたりは羽先は削られているのだろう。なかなかそれ以外の選択肢は浮かばないが、やはり生殖羽の残存なのだと思う。

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同上
この個体は基本的に採食中で行動としては単調で雨覆など、動きが必要な部位は中々観察できなかった。その中で唯一翼を開いた瞬間。大雨覆、中雨覆は普通秋に観察する♀非生殖羽のものと同じである。それに対し著しく摩耗、退色しているのが小雨覆である。かなり色褪せが激しい。元々の色は普通の♀生殖羽のものだったのだろうか(このバフ色味懸った摩耗退色のしかたは負傷等により換羽をせずに長期間残った体羽の色彩に似ているように思う。灰色の羽毛が長時間放置された場合、このような色になるのだろうか。)。摩耗した羽毛に僅かに横斑状に黄色部が見られ、これらは生殖羽に換羽した雨覆に見られる、橙色の斑の褪せた姿であると思われる。
このカットで見ると三列の摩耗がよくわかる。
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同上
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同上
右側。大きな違いはない。
これらを纏めてみると、この個体は越冬地換羽型の♀ということでよさそうだ。コガモ、オナガガモではしばしば観察したが、ヒドリガモでは初めて観察した。普段からヒドリガモの渡来の多いフィールドで観察しているのに一度も出会ったことが無かった。現地ですぐに推察できなかったのが心残りである。

久しぶりに大阪でカモ観察をした。陽が雲に陰るとかなり冷えこむ。滋賀京都とはまた違った海を感じさせる寒さ。また今季も寒さとの戦いが始まる。