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オナガガモ×コガモ♂成鳥第四回非生殖羽→第四回生殖羽 18/10/09 鴨川
通称"オナガコガモ"。2016年3月30日鴨川丸太町橋付近にて第一回生殖羽の姿で発見した。
今年も帰ってきた。昨冬の飛来も同日2017年10月9日、全く同じ日、同じ場所にやってきた。
嘴のパターンや翼パターン、羽毛の模様、行動、飛来地などからも例年渡来の個体と同一と思われる。個体識別が出来ており、発見時が第一回生殖羽であったため今季で第四回非生殖羽とわかる。年齢がわかり、また雑種の非生殖羽ということからも大変貴重な個体である。

━━今冬もこの"オナガコガモ"の初認に期待を込め、狙いを定めて10月9日に希望休を入れた。前日10月8日は夜勤明けだ。明けで出かけることは遠征以外ほぼ無いが、疲れを感じながらも三条中心に少し見回り帰路につくことにした。この日はコガモすら少ない。昨年飛来した中洲を見る・・・まだ来ていない。ホッとしたのやら不安なのやら。複雑な思いを持ちつつ改めて帰路についた。

 さて翌10月9日。昨年の飛来日である。いつも鴨川でカモを見る際、時間が早ければ市バスを使い西賀茂から下に下れるだけ下っていく。少し遅めの場合は四条及び五条あたりから遡上し、上がれるだけ上がっていく。当日時間はあったが、昨年の飛来地である三条へ直接向かうことにした。得体のしれぬ緊張感を背に纏っていたように思う。
 草は枯れ、景色は秋の様相を呈す。河川敷は残暑の気配が残り、風には冷めかけた温もりがあった。昨年飛来した中洲にはコガモ♂成鳥非生殖羽が2羽にステップワイズした若めのカワウが翼を開いており、それ以外はマガモが数羽いるのみで、昨年のコガモ10数羽に混ざっていた様相とは大きく異なる。今季はカモ全体の飛来が遅い・・・まだ飛来していないか。そう思い双眼鏡を外した瞬間、右からいきなり中型の明らかにおかしなjizzをした個体が視界に入ってきた。昨年これでもかというほど見たシルエットのそれそのままで、肉眼でもう"オナガコガモ"と見当がついていた。狙い定めて見事に的を当てた喜びを押さえながら、冷静にシャッターを切った。

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同上
昨年に比べ、やや換羽は早いようである。全身がほぼ非生殖羽であった昨年に比べると今年は既に目に見えて生殖羽が出現している。生殖羽が先に出現することが多い、尾筒横をはじめとし、脇中ほどにも波状斑を纏った生殖羽が出現している。
脇羽は羽縁が太く、一枚一枚が大きい点はオナガガモ的であるが、模様はコガモのパターンに近い。肩羽は概ね無斑で、長方形様に伸びそれぞれ両種の形質が発現していると言えるだろう。後列に行くにつれてオナガガモ要素が強くなり、パターンもオナガガモ的である。中間形質要素を多く持つが、尾筒はコガモ的な要素が強い。
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同一個体 17/10/09
この日は羽ばたきを撮影できなかったため昨年の在庫から。
オナガガモに近い雨覆を持つが、橙色帯は外側に行くにつれて淡色味を帯び始める。次列風切は丁度両種中間的である。他者の指摘で気付いたが、このパターンはトモエガモのそれに似通っているようにも思う。
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同一個体(左) 17/10/10
右はオナガガモ♂成鳥非生殖羽→生殖羽。サイズはちょうどコガモとオナガガモの中間である。顔の印象は一見するとオナガガモであるが、嘴が短く傾斜がややきついため、コガモの雰囲気を醸し出している。頭部に対し胴がやや長く見えバランスが悪い。この体つきは実物でより一層違和感を持たせ、遠目でもみ慣れればわかるほど重要なポイントである。

【行動】

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採食姿勢は倒立まではいかず、中途半端な姿勢で水草を攫う。コガモの採食にオナガガモの倒立を加えたような形である。浅瀬ではコガモやオナガガモなどがよく行う足踏み採食を比較的よく行い、ヒドリガモなどパンに餌付く種の群れに混ざっている場合は一緒にパンを食らう。
しかし基本的に積極的に餌付いている様子は無く、臨機応変な採食を行っているようだ。しかし、18年シーズンは昨年よりもあきらに警戒心が低くなっているように感じる。
同居する種はオナガガモともコガモとも関わらず付近にいる群れの後方についていくことが多い。稀ながらカルガモについていたこともある。
行動範囲はやや広く、時期が進むにつれ上流に遡上していき最終的に北区に突入するころに春を迎えと去する。

【鳴き声】
ピリッピリッというコガモの声に近いがややウェットで低い印象を受ける。ディスプレイ時の声などは不明。

当地のあの距離で稀な雑種を観察できるというのは大変幸せである。この個体はカモ屋の間では話題を呼び様々な人の目に触れた。バーダー誌にも登場し、この個体を通して様々な感性を得ることができた。知的好奇心をあおり続ける個体たちには常に感謝したいと思う。